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安全に食べることができる食品であることを確かめるために、厚生労働省ではポジティブリストという制度を実施しています。制度の内容を詳しく知ることにより、どのような仕組みで検査がおこなわれているのかを、正確に理解できます。

ここでは、ポジティブリストの内容について詳しく紹介するので、安全な食品を食べることに関心のある人は、ぜひ参考にしてください。

平成17年から実施されているポジティブリスト制度

ポジティブリストは平成15年に食品衛生法が改正されたことにより、実施されることが決定した制度です。

食品に含まれている残留農薬が一定の基準値を超えている場合には、商品として販売することができなくなりました。飼料に含まれている添加物や動物用の医薬品が食品に一定量以上残留している場合にも、制度が適用されます。

実際に制度が施行されたのは平成17年の5月29日からです。制度の施行後すでに10年以上が経過していて、日本の食文化の安全に大きく貢献してきた制度です。

この制度が誕生するまでは、食品に多くの残留農薬が含まれている場合でも、その農薬の残留基準が決められていない時には、それを規制する方法はありませんでした。

こうした制度には問題も多く、消費者からも改善が求められていたことから、法律が改正されてポジティブリスト制度が実施されるようになりました。ポジティブリスト制度では原則として、食品に使用されている全ての農薬が検査の対象になっています。

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ポジティブリスト制度における残留農薬の基準値

それぞれの農薬には個別に残留農薬の基準値が定められていて、基準値はさまざまな要素を総合的に考慮して決められています。残留農薬の基準値は、決められた正しい方法で農薬を使用した場合の残留濃度を基準にして計算されています。

基本的には日本国内で独自の基準を定めていますが、国際的な基準が存在する特定の残留農薬の場合には、そうした基準も参考にしながら基準値は決定されます。基準値を決定する際に特に重視されているのは、人間の体に対する影響です。

長期間同じ食品を摂取し続けた場合に、健康に何らかの影響が出る可能性があるかどうかが、判断の一つの基準になっています。具体的に使用されているのはADIという数字で、日本語に翻訳すると「許容一日摂取量」という意味です。

一人の人間が生涯にわたって毎日摂取し続けたとしても、健康に悪い影響が出ないと推定される一日当たりの摂取量が、ADIです。残留基準値は短期間における影響も考慮して決定されており、残留農薬の濃度が高い食品を短期間に大量に摂取した場合の危険性を判断して基準値は決められます。

この場合に使用されているのはARfDという値ですが、これは「急性参照用量」のことです。24時間もしくはそれより短い時間に摂取しても、健康に悪い影響が出ないと推定できる量がARfDです。

ポジティブリスト制度における検査の方法

ポジティブリスト制度において食品の検査を担当しているのは、国や地方自治体などの公的機関です。国内で流通している食品を検査するために実施されているのは、販売されている食品の一部を集めて検査する方法です。食品によっても検査される数量は違っており、事前に決められた計画を基にして検査が進められています。

外国から輸入された食品についてもポジティブリスト制度は実施されていて、食品を輸入している事業者は法令の基準に従って手続きを進める必要があります。検査を実施する前にまず必要になるのが、食品を輸入した際の届出です。

届出先は全国各地の検疫所で、輸入された食品の中から一部を無作為に選んで、残留農薬の検査をおこなっています。輸入食品の検査をおこなう場合でも、事前に決められた指導計画に基づき検査が実施されており、法律に定められた基準値以上の農薬が含まれている場合には、適切な処分がおこなわれています。

輸入された食品は国内に流通しないように破棄されることになり、残留農薬が基準値を超えた理由について、原因の究明もおこなわれてます。その一方で、事態の再発を防止するための対策作りも、食品を輸入している事業者の重要な仕事になります。

収穫後に使用される食品添加物の扱い

ポジティブリスト制度では、食品の栽培中に使用する農薬以外の薬品も検査の対象になっています。こうした薬品の代表的なものが、ポストハーベストです。ポストハーベストとは、農作物を収穫した後に使用されている薬品類のことで、農作物を一定期間保存しておく必要がある場合などに使用されています。

防カビ剤もポストハーベストの一種で、船を使用して大量に農作物を輸入する場合には、輸送中にカビが発生する可能性もあることから、船に載せる前に散布されています。ポストハーベストとして使用されている薬品の中にも、人体に摂取すると健康に悪い影響を与えるものがあることから、しっかりと検査をおこなう必要があります。

ポストハーベスト以外の薬品も検査の対象となる場合がありますが、検査が実施されるかどうかの基準となっているのは、食品衛生法に規定されている食品添加物に該当するかどうかです。同法では食品添加物のことを、食品の製造過程において添加・混和などの方法により使用しているものと定義していて、加工や保存などを目的として使われているものが対象です。

食品を輸入する際の注意点

ポジティブリスト制度の適用を受ける食品を輸入する際に注意しなければいけないのは、日本と外国では、残留農薬の基準値が異なっている場合があることです。参考サイト|キューサイ分析研究所 - 残留農薬

生産国では許容されている量であっても、日本では許されていないケースもあるので、輸入する前には両方の国の基準値をしっかりと確認しておく必要があります。国によって残留農薬の基準値が異なっているのは、農作物を育てるための環境がそれぞれ違っているからです。

一年を通して平均気温が高い国の場合には、特定の害虫が発生しやすいこともあるので、通常よりも多めの農薬が使用されることがあります。その他にもそれぞれの国の実情を踏まえて残留農薬の基準値が独自に決められているために、輸入事業者は細心の注意が必要になります。

同じ種類の食品であっても、国によって検査される部分が異なることもあり、お米なども国によって検査の方法が違っています。

安全な食べ物の流通に欠かせないポジティブリスト制度

ポジティブリスト制度について詳しく紹介してきましたが、安全な食べ物だけを国内に流通させるためには欠かせない制度です。制度が開始されてからすでに10年以上が経過しており、残留農薬を基準値以下にするため、農作物を栽培する生産者は農薬の使用に日ごろから気をつかっています。

今後もポジティブリスト制度は、日本の食文化を支える上で大切な制度として維持され続けるのではないでしょうか。